音・岩・光

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25112014

モーツァルテウム財団所有が所蔵(有)するモーツァルトが実際に使ったヴァイオリンと自筆の楽譜などの展示が、第一生命本社の入るDNタワーで行なわれているということで足を運んだ。DNタワーのDは第一生命のDなのだそうで、Nは同じく農林中央金庫のNで非常に安直であるが、都の歴史的建造物に指定されているらしく最近のニオイのするビルではなかった。となると、設計者が気になってくるのであるが、今日のベクトルはモーツァルト。



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お目当てのヴァイオリンは鑑賞ルートの最後にあった。上のパンフレットにあるヴァイオリンの写真とは少し違う個体に見えなくも無いけれど、ガット弦が張られておりテールピースも写真とは違ったものが付いていたので、そう見えるだけなのかもしれない。アゴ当てのシミは良く似ているし。

作者はPietro Antonio Dalla Costa(ピエトロ・アントニオ・ダラ・コスタ)で1764年製作、ということは日本で言うと江戸の中後期くらい。モーツァルトが1756年に生まれているので、新作をそのまま手にしたとするなら彼が8歳のときになるが、成長の早い西洋の8歳といっても大人サイズの楽器は未だ早い年齢だろう。会場で配布されていた資料によると、やはり1781年に手に入れたものであるそうだ。ということは17年ものを手に入れたことになる。このとき、モーツァルトは25歳でウィーン時代を始めたばかりの頃、つまり円熟期真っ只中に使っていた楽器と言うことになるだろう。現代のロックギタリストのように何艇もヴァイオリンを持っていたのだろうか、気になるところではある。

そんな時期に作曲されたアイネ・クライネ・ナハトムジークの幻の2楽章の断片と思われる、彼筆の楽譜も展示されていた。ここで天才が天才である所以を見たような気がした。数小節(16小節)書き進めたところで、その筆が止まっている。凡人であれば、もしかしたら全てのメロディラインを書き終えてから、やっぱりこの楽章はやめようとボツにするのかも知れない。あるメロディが浮かんできて、これは使えるという感触があれば尚更だろう。しかし、彼はたった16小節書き上げたところで何の躊躇いもなく、そのアイディアをいわば捨てているのである。実際、既に他のパートの構想も彼の頭の中で出来上がっていたのか、それがあったとして楽譜には面倒くさくて書かず、そのままボツとしたのか興味深い。もしくは、突然浮かんできたメロディをただ書き留めただけなのだろうか。後日それを読み返して使えないと思い、そのままになっていたものが発見されたとも考えられる。この断片を見ているだけでも様々に想像が膨らんで楽しいものである。

最近は段々とヴァイオリンの何処を見ると鑑賞が楽しめるのかが判ってきた(とは感じているが)。今回の展示は、ケースの中に設けられたL字板状のものに立てかけるタイプのものだったので、できれば裏側からも見られるような方法(吊るなど)だと嬉しかったなというのが正直なところではあるが、均整のとれた美しい楽器だった。またこの楽器を使ったミニコンサートを時間の関係で聴くことができなかったので、肝心の音も気になるところである。ピアノの調律の音が心地よく響くDNタワーのホールが、より一層その思いを掻き立ててくる中、建物を後にしたのであった。



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by Tashinchu | 2014-11-25 14:30 | Instruments | Comments(0)

22112014

太陽系の惑星のうち肉眼で確認できるであろう最遠の天体、天王星。明るいときには5等星くらいにはなるはずで、光害のほぼない場所で天体の位置が予め判っていれば見られる可能性があるのがこの惑星だ。自分自身は肉眼で確認したこともなければ、望遠鏡を向けてみたことも無い天体だったので、今回の観望会は非常に楽しみにしていた。
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国立天文台三鷹キャンパスでは月に2回の定例観望会が催されている。参加は無料だが事前の申し込みが必要で、運よく2席を予約できた。と言うのは、会は前後半に分かれてそれぞれ約150人の募集があるので、募集日当日の開始時間直ぐには満席になることはないだろうと高を括っていたのだが、ものの10分で募集終了の表示がWeb上に浮かんだためだ。自分はちょうど時間が出来たので、募集が開始しして直ぐにHPへアクセスし申し込みを完了できたのだが、昼休みに申し込んでいたら駄目だったことになる。あっという間に300人分が埋まってしまったことには驚いた。流石は都内のイベント、絶対数というか分母が大きいことを痛感する。
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上のような冊子をもらえる。(表紙転載については事務局に確認済)




という訳で、この日は日中から夜の天気が気になって仕方がなかった。昼間、2年半ぶりに会う友人の手伝いをしながらが過ごし、それを終えてビルの外へ出ると、雲ひとつ無い夕刻の空が広がっているのがビルの谷間からも確認できた。ニヤリ、である。天文台の最寄り電車駅に着く頃には辺りは暗くなっており、その武蔵境駅でミサオと合流。バスに乗って最寄バス停を目指す。この路線は以前FC東京vs清水エスパルスの試合を観戦しに、味の素スタジアムへ向かうときに使ったものと同じなのだが、はてさて、そういえばそんなバス停名があったものだと記憶が返ってきたことに、楽しみが一段と増していくのを感じた。前回同様、同じ目的地に向かうのであろう一行と一緒にバスに揺られること15分で、いよいよ天文台に到着した。




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ひと目でここが目的地バス停となりそうではあるが、「天文台裏」というひっかけ停留所があるので注意したい。




自分達は後半の部への参加だったので、門をくぐると前半の集団がぞろぞろと外へと繰り出してくる場面に遭遇した。なるほど、一体150人をどうやってまわすのかピンとこなかったのだが、少数に区切って受付・事前解説・観望をしているようである。先ほど建物を出て行った集団の他に、会議室(らしき場所)で説明を受けるグループやロビーで冬の夜空の説明を聞いている人たち、更に受付横には天文台の職員が天文や宇宙についての質問を受け付けるコーナーも設置されており賑やかである。子ども連れの親子(きっとお父さんか子どもが星好きなのだろう)や若いカップル、天文マニアに老夫婦の姿もあり、都会のど真ん中でも星に興味がある人が意外に多い(というか申し込みの時点でそうだろうとは思っていたのだが)ことに嬉しさをおぼえる。

後半の受付を待ちながら職員のお話を聞いていると嬉しいNewsが耳に入ってきた。三鷹キャンパスのスタッフが開発した宇宙シミュレーションソフト「Mitaka」を、三鷹キャンパスのHPから無料でダウンロードできるというものだった。後日自身のPCに組み込まれて、現在操作方法を模索中である。月や火星に着陸したり、太陽系を宇宙船で旅しているようなシミュレーションもあったりと、非常に完成度も高く大人でも楽しめるアプリケーションなので、興味のある人はダウンロードをオススメしたい。流石は国立天文台の作ったソフトである。




カップ自販機で買ったホットレモンを飲み干し(自販機なのに蓋がカチッと装着されて出てきたのには驚いた)、会議室で事前解説を受けた後、いよいよ目的の天文台へ。建物から数分のところに原っぱがあり、その端にドームが見えてきた。ここまで来ると建物周辺の外灯の影響もほとんど無く、暗さが勝ってくるのが判る(とはいっても光害の影響はあり、アンドロメダ銀河は確認できずだった)。


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主鏡は500mmカセグレン望遠鏡




初めて見る天王星は青白かった。土星よりも更に外側の周回軌道を回っているので点にしか見えなかったけれど、初めて月のクレータを見、初めて土星の輪を見、初めて木星の縞模様と衛星を見たときくらい感動した。やはり近い天体は、星雲や銀河などの遠いものよりも親近感が沸くのだろうか、ホルストの組曲惑星の天王星が頭の中でBGMとして流れていたようにも思う。

天文台の外には2台の望遠鏡(屈折と反射)が設置されており、白鳥座のβ星アルビレオ二重星を捉えていた。これも星に興味がない人でも充分に感動する星ではないだろうか。肉眼では1つの星にしか見えないが、望遠鏡で見ると赤と青の星がそばに寄り添って光り輝いているのが確認できる。スタッフの話ではアルビレオのアルは2つと言う意味らしい。中国語のイー・アル・サンと関係があったら面白そうではあるが、麻雀で2はリャンと発音するのでその線は薄そうである。


眠らない都会の中でひととき、宇宙を感じる時間。11月22日(いい夫婦)の日は、僕だけかも知れないが、ミサオと2人で喧騒を忘れ頭上に思いを馳せる楽しいひとときを過ごすことができた。また機会があったら定例観望会にはやってこようと思う。


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by Tashinchu | 2014-11-22 19:15 | Events | Comments(0)

16112014

JR中央線国分寺駅から西国分寺へ向かう車内から右側を見ていると、緑いっぱいの広大な森が目に入ってくる。じつはこの場所には国分寺市の名前の由来にもなった国分寺・国分尼寺があったのだそうだ。そこへ「この木なんの木・・・」でお馴染みの日立製作所が中央研究所を設立したのはどれくらい前なのだろうか。創業社長だった小平浪平氏は研究所設立に際して「木々を避けて建物を置くように」と言ったのだそうで、なるほど幹の太い木々が多く残っていることに、その言葉が今でも引き継がれているのを見た気がした。

この研究所は年に2回一般に開放される。春の花と紅葉の時期の2回で、この日は天気も気温も心地よい見事な秋晴れとなり、多くの人で溢れかえっていた。敷地内の原っぱには運動会役員所で使われているあのテントが何張りも連なっていて、その周りにはピクニックシートを張って食事や会話をする、人々の姿がまるで桜の花見会場のようでちょっと残念ではあったものの、賑やかなことはそれだけでも楽しい雰囲気になるものである。久々に1時間も並んで屋台フードを食べたのも日本らしくて良い感じである。研究所内を散策した時間くらい並んでいた計算になるのだが。

この開放日の為にどれくらいの時間が費やされたのだろう。落ち葉も多くなってくる時期でもあるので、そんななかでもアスファルトと原っぱ部分にその葉が無く、綺麗に奥のほうにまとめられているPileを見たときにそんなことを感じたりもした。そのまんまの上をカサカサ言わして歩くのも楽しいのではないかと思うのは自分だけだろうか。クヌギ、ミズナラ、コナラなどのどんぐりも道路の隅に追いやられていたけれど、子どもたちはとなりのトトロでメイがしたようにそれを拾い集めていたのが微笑ましかった。この先もずっと残っていって欲しいなと思う情景である。

散策道脇には、初めて見るフジバカマ(花は無かったが)やセコイヤ(レッドウッドで30mくらいはあったと思う)などがあり目を引いた。フジバカマの他、6種の秋の七草を空で言えなくなっている自分に驚く。ススキが最後まで出てこなかったあたり、いただけないというか焦りを感じた。鳥の数も(今日はほとんどおらず、カラスばかりだったが)通常は多いのだろうと想像した。マガモや白鳥が、それでも池にのんびり浮かんでいるのを見ると、ここはBirdingに最適な場所なんだろうと思うが、常時開放なんかしたら鳥には大きな迷惑になりそうである。あとあと知ったのだが、ここに生息している白鳥は天皇から下賜されており、皇居御堀の白鳥と血縁関係にあるのらしい。

森は外の喧騒も聞こえてはこないほど深く湧水も沸いているほどで、人のザワザワを除けばその豊かさを感じることが出来きた。惜しむらくは、池の周遊路を内に回ったので池の外側に生息していたらしいメタセコイアを見逃したことくらいだろうか。とあるドラマで「生きる化石」と再三紹介されていたその木を見ずに終わったのが悔やまれる。来年の春の開放日にはまたミサオとここに戻ってこようと思うのであった。


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久々にOM-1を持ち出してみた。T-Max100は数回しか使ったことが無いけれど、最近はフィルムの銘柄にはこだわらないようになってしまっている。1枚1枚噛み締めながら切る時間がたまらない。




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by Tashinchu | 2014-11-16 11:30 | Events | Comments(0)

15112014

山茶花
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イメイジしたものをどうやってカタチにするか、その方法を知らないことには表現は出来ない。それよりも、まずイメイジをするところから始めなくてはならないのかも知れないと痛感したりもするのである。

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by Tashinchu | 2014-11-15 12:30 | Photograph | Comments(0)

03112014

BanffからKanaちゃんが一時帰国。あれから1年はあっという間だったけれど、その1年は多くの変化とエキサイティングな毎日のおかげで、密度のあるあっという間といえるだろう。地元の北海道から東京へ到着したその日に、ミサオはアヤ子ちゃんを誘って3人で浅草観光をしてきたようだ。その夜、我が家に集まって簡単な食事会を催すに至った。近況報告とUpdatesで話が弾む。コースケ君も仕事を切り上げ合流して、9月に行ったカナダ新婚旅行の思い出話を聞かせてくれた。Bow Valleyは既に冬が居座っているようだが、友人の皆は元気にしているのだろうか、また生活してみたいものである。


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数日前に初めて遠征した、アヤ子ちゃんが毎週木曜にスタッフで店番をしている埼玉県川口のボルダリングジムCRAZE。ボテと呼ばれる大きなホールドは、最寄ジムにもあるけれど連続した配置としては存在していないので面白かった。コンペをしているような感じがして楽しい。大きな空間ではないけれど、店の雰囲気も良くクライマー達との会話も弾んで(アヤ子ちゃんとコースケ君の役割は大きい)終電ギリギリまで登りこんでしまった。体調不良でひと月ほど登っていなかったので、翌日は体がばきばきになっていたけれど、それにも勝る時間だった。また木曜とはいわず、時間があるときは行ってみようと思う。やはり違うジムに行くと課題の性格が違っていて面白く、成長に繋がる気がする。




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by Tashinchu | 2014-11-03 18:30 | Events | Comments(0)

02112014

年に一度行なわれる弦楽器の祭典、というのは大袈裟かも知れないが、九段下で行なわれた弦楽器フェアへ。会場ではYukonから一時帰国中のナオトさんと合流して久々の音楽談義ができ、充実した1日を過ごせた。その数日後に山手線新宿駅のホームで偶然再会したのには本当に驚いた。広くて人口も桁違いの東京のある1点で遭遇する確立はどれくらいなのだろうか。ほんの僅かな時間だったけれど、同じ下車駅に向かうまでの短い時間だったが、話がまた出来たのは嬉しかった。


休題、沢山の新作楽器を試奏出来るのは非常にありがたい機会である。前日まで駒立て等の最終調整をしていた友人が製作した、超新作ヴァイオリンも弾かせてもらった。製作過程を見ているだけに、ただの木片がこんなにも美しい音を出す箱へと姿を変えることに驚くのである。クレモナ時代に製作した先生のヴァイオリンも興味深い。日本用にセッティングをしているのだそうで、なるほど、隙の無い音が出てきていた。自分も気候風土にあわせた調整を出来るようにならなければならないし、そのためのデータ収集を自身のセッティング経験から積み重ねていく必要がある。明けても暮れてもそういう時間を過ごせるのが一番ではあるが、今のところは量より質で勝負するしかないだろう。





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Sandrine Raffinさんと


Jean Francois Raffin氏の娘さんである彼女の弓を、彼女の説明付きで弾かせていただいた。サンドリーネ(ヌ)さんの哲学であり、プランと製作との関係性など、貴重なお話を聞くことができた。それぞれの弓が、説明通りの性格持っているところには感心した。弓(木材)と会話をしながら作っているのだろうか、などと日本の伝統工芸職人の仕事に重なる部分を見つけたような気分がした。「小さいし整頓されていないのよ」と照れながら話をしてくれた彼女の工房を、将来訪ねてみたいものである。






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Double Bass製作状況を見させていただいたTetsuさんのブース




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木材のブースも充実している
ハカランダのサイド板と指板が販売されていたが、ブリッジをハカランダ材に替えたらどうなるのかが気になるところである




一番の驚きは、この竹で製作されたギター。特別な圧着方法を採用しているらしく、その開発が一番の困難だったようだ。音はというと、やはり木材とは違って芯が無いような感じもしたが、今まで木材で作られたギターしか弾いたことがない自分に、その比較をすることは出来ない。ガソリン車と電気自動車を比べてみよ、と言うようなものである。気になるサスティンや反応は充分演奏に耐えうるポテンシャルがあると感じられた。値段がどれくらいになるのか判らないが、成長も遅く枯渇しつつある木材ギターに代わる新しい竹ギターの進展が楽しみである。何といっても竹の成長は早いのが利点なのだから。
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節のあるところがいかにも竹らしく、そして美しい容姿を見せてくれている







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by Tashinchu | 2014-11-02 13:00 | Instruments | Comments(0)