音・岩・光

05022015

セットしていただろう筈の目覚ましがセットされていないときほど、サクッと目覚められる朝はない。起床予定は04:45AMで、いつもの通り定刻の数分前に自然と目が覚めた。が、アラーム解除をしようとしてみると既にOFFの表示。「(あっぶねぇー!)」と心の中で叫ぶ瞬間だ。

06:33発のこだまに乗って名古屋を目指す。途中の富士川周辺で真偽のほどは定かではないが、交流電気の周波数の変化に伴いエアコンの風が一瞬止まるポイントがあるらしいがそれは発見できなかった。昔は車内照明も一瞬消えたようだが(在来線ではなんとなく覚えている)、今ではバックアップ機能があるようで、エアコンだけほんの一瞬消えるのだそうだ。ただグリーン車内にマスク姿のハリセンボンはるかさんは発見できた。こだまということは小田原あたりで撮影でもあるのだろうか。


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最初に向かったのは杉藤楽弓社。1899年創業の老舗弓製作会社、ということはLapella Rosinとほぼ同じくらいの歴史を持つことになる。現在は4代目の意志を継いだ5代目杉藤慎子さんが社長をつとめておられるようだ。見学の内容や工房のようすなどはここでは載せるのを控えさせてもらうが、試奏させていただいたMasterクラスとSensitiveシリーズの私的記録を残しておこうと思う。

Masterシリーズは簡単に言うとStandardシリーズの上をいくモデルで、現代の弓製作の主流と言われる製法で作られており、材の厳選度が非常に高く、最高品質の弓が揃っているクラスといってよいだろう(驚くのはStandardシリーズにおける材の選定から、かなり厳しく行なわれているので、それすら一握りの材しか製作にまわらないこと)。プロの使用や録音、現代的演奏方法に耐えうる性能と力量を兼ね備えた弓で、力強さが売りとなっている最上位ランクのシリーズ。弓の自重や右腕の適当な圧を利用して演奏すると、決してただうるさいだけではない驚くほど大きな音が出る。

SensitiveシリーズはAll hand craftで作られて、旋盤を使うことなく鉋や鑿で丁寧に素材の性質をそのまま取り出してあげるというコンセプトで作られている弓である。職人さんが材の木目や杢、繊維の方向などを見極め、木自体がどう切り出して欲しいのかに耳をすませながら製作が進んで行く。なるほど、もしかしたら映画「耳をすませば」はこういうところも感じながらタイトルが付けられたのかも知れないと、関連付けが大好きな自分は思ってしまった。円空さんの仏像を見ているようですねと話したら、そうかも知れませんねと笑顔を浮かべた社長の顔が、このシリーズの本質を物語っているようにも思えた。

さて、両者のPlayabilityとapplicabilityはどうだったかというと、これがまた同じ材から製作されているのにも関わらず、その方法が変わるだけで弾いても聴いても明らかに違いが判るほどで興味深くたまげてしまった。自分としては今後2本目の弓を持ちたいと考えているので、その音というよりは(自分の汚い音は重々承知しているので)演奏性に重きを置いて書いてみようと思う。

Masterシリーズは今持っている弓とタイプが似ていると感じた。少しばかりの圧を掛けてあげると楽器が大きく反応してくれる。コシや粘りも、同じくすんなりと自分に返って来てくれる印象を受けた。ピラストロ社で言ったらエヴァやオブリガート、トマスティック社で言えばPeterやインフェルド赤などの、現代的な弦と演奏方法で得たい優美で輝かしい音なんかに合いそうな感じがする。逆にSensitiveはオリーブ、オイドクサ、ヴィオリーノ、インフェルド青な感じだろうか。楽器が本来持っている音を自然に引き出す、もしくは、よりニュートラルに攻めたい場合に用いると上手く返事をしてくれるような感じがした(音の遠達が無い訳では決して無い)。私はドミナント一辺倒なので、ちゃんとその弦を張ってみないと判らないけれど、印象としてはそんな感じになりそうである。

Sensitiveで驚いたのはその軽さだった。兎に角軽い。話によると、木の素質を活かしきり余計な部分は削ぎ落としているのでコシは残ったまま軽くなるのだそうだ。軽いからといってバランスが悪いかと思えばそうでもなく、演奏方法を変えることで直ぐに対応できる。圧をかけるというよりは、弓の行きたいように滑らせてあげるとでも言えばよいか、上手く説明が出来ないがそんな感じだった。無理に大きな音を出さずとも自然に音が出る印象なので、遠くで聴いてもMaster弓と同じデシベルで聴こえてくる。デシベルと書いたのは音質がやはり違うと感じたからで、音響専門ではない私が、大きさは同じだが質というか音色と音圧が違うのを、どう表現したらいいものか判らないのでとりあえずそう表記したと思っていただきたい。

Sensitiveの弓は、材の残したい部分だけが残っているので純度は高いのだろう、それに軽さが加わるとレスポンスが非常に良くなる。ヴィンテージアコースティックギターの薄いニスが表板の反応の速さと振動の良さに大きく影響しているのと同じ理論なのだろう。音の立ち上がりが上位モデルのMasterと比べても早いのだから、表現方法は色々と研究できる長く付き合いたい弓、そんな感じがした。1mm動いただけでもしっかりと音として成り立って出てくるので、弓先での音の残しだったり運弓の荒さなどもカバーしてくれるだろうし、逆に言えば、ちゃんとした運弓をしないと雑な感じが目立ってしまうので危険な弓ということにもなりそうだ。

無闇な方向にではないシンプルさを極限まで追い求めたモノについて毎回同じことを思うのだが、いい楽器や道具はミスをカバーしてもくれるけれど、ちゃんと使ってあげないと思うようなレスポンスは得られない。今回もSensitiveシリーズに同じようなことを感じた。「初心者だからMasterやSensitiveなんて、、、Standardから。」と遠慮するより、初めから良い弓に触れることで、初心者だから出るミスを弓が知らずの内にカバーしてくれるだろうし、弓が持っているポテンシャルを引き出すためのちゃんとした演奏方法や末端までの集中力をも鍛えられるはずである。

この杉藤の2タイプから今後どちらを選ぶかと問われたら、自分はSensitiveを選ぶだろう。他のメーカさんでもいい弓は製作されているわけで、カーボンも含めそれらも試しながら、そして一番重要な自分の楽器との相性を感じながら決めて行きたいと思う。今回は興味深い話を聞けたし、疑問に思っていたことについてヒントをもらえたようで、今後の自身のスタイルというか極めていきたい部分に新たなページが加わったような気がする。まだまだ知らないことだらけだし、試したいことは山ほどある。どうやって進んでいこうか、こういう機会があることに感謝したい。




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昼食は迫力の味噌カツ

カツが見えない味噌カツ。メニュに小と大があったら男は通常、大を頼みたくなるところ。だって普通と大盛ではなく、小サイズと大サイズと思いますからね。名古屋の盛り方をすっかり忘れていたことに気付いたのは、先に隣の席へ登場した小の皿を見たときだったが時既に遅し。そしてネギの量も半端なく多い上に、ご飯と味噌汁はお代わり自由と来た。お腹も視覚的にもいっぱいになってしまった。




午後は楽器卸のマックコーポレーションへ。現在小売店で仕事をしている自分にとって卸が何を考えてどう動いているのかが実際に見えるのはありがたく、小売としてどう戦略を練っていけばいいかなど今後に役立ちそうである。一番の収穫はゴールドブラカットにはE線の他に、ちゃんとADG線も存在することを知れたことだろうか。クオリティの関係から市場には出回らない(排ガス規制に引っかかって輸入できなかったトラバントみたい)ようだが、E線専門という訳ではないことが知れただけでも収穫だった。実際にどんな音がするのか試してみたいものである。

ここの職人さんが使っていた突き台とリーマー置きもセンスがよく、もし時間があれば作ってみようと思う。たった1枚木材を加えるだけで利便性が格段に向上するのだから、こういうのはどんどん盗んでいきたい。横ズレをどう解消するかという問題が付随して発生してくるけれど、いちいちセットしなくて済むのはありがたい。自分の道具も更に改良してみようと思う。



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名古屋で食べることに意味がある白ノワール


2店の見学が無事予定時間内に終わって名古屋駅へ帰ってくると、新幹線まで残り時間は30分だったが、これはTo Doリストの優先順位上位の項目だったので急いで最寄のコメダ珈琲へ。15年ほど前、コメダの最東出店が浜松までで静岡には店舗がなかった時代、わざわざ浜松のコメダまで食べに行ったことを思い出す。当時はミニ白ノワールなんてメニュにも無く、こんな小ぶりなものは名古屋っぽくないと思っていたが、この日はミニで勘弁してもらった。あの頃から変わらないこのナゴヤナイズドされたスイーツを、ようやく本場で食べることが出来た幸せ。日本のコメダには白ノワールが、カナダのTim HortonsにはTim bits、である。

東京は雪が降ったようだが、名古屋は1日中青空で気温もそこそこ上がり、少しばかり観光的なものも出来たのが嬉しい。来年も参加できるのであれば是非とも帰って来たい。帰りの新幹線で静岡駅を横目に、やはりエアコンの切れる瞬間を気付くことなく都内へ帰ってきた。あとあと気付いたのだけれど、最終的に中央線に乗るなら品川よりも東京まで出たほうが良かったわけだ。定期が使えることが頭にありすぎて、山手線の品川ー新宿というルートをとってしまったことを少し後悔したけれど、ぷらっとこだまの乗車券に付属でついてくるドリンク無料券を使わずに帰宅してしまったことを更に後悔した。新幹線の改札内でしか使えないのだろうか、もし山手線内やJR在来線のキオスクでも使えるなら使ってしまわなければ。


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青い空に栄える名古屋電波塔


静岡市内にも塔は絶対あったほうがいいと思うのは自分だけだろうか。京都や東京、大阪、更にはCalgaryやTorontoにもあるのに勿体無い。富士山も見えるわけだし塔マニアは絶対に登りに来ると思うのだけれども。





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by Tashinchu | 2015-02-05 10:30 | Music | Comments(0)